食品29

真っ赤に熟れた、おいしそうなトマト。畑で採れたばかりの新鮮なトマトを、まるでフルーツをかじるように、そのまま丸かじりして食べたことがありますか?丸かじりするとプシュッーと弾けるトマト。そんな風に明るくて、健康的なイメージたっぷりのかわいらしいトマトですが、こんな風にトマトを食することができたのは、少し前の時代の話だったかもしれません。

大好きなトマトだけど。

野菜や果物に付着する農薬。例えば、「このトマト、農薬は大丈夫かしら」「発がん物質が付着していたら困る」「トマトを食べて病気になったらどうしよう」等々、いろいろなことを気にしてしまう人も少なからずいるかもしれません。

それならば、「よく洗ったら大丈夫かしら」そんな風に考えて、トマトをゴシゴシ、お水で洗う人もいるかもしれませんし、あるいは、1つ1つのトマトの皮を丁寧にむいて食べる人もいるでしょう。また、トマトは、煮込んだりして加熱料理に使うこともできますから、付着した農薬は加熱すればきっと大丈夫と思っている人もいるかもしれません。

それでもやはり、トマトはフレッシュにサラダで食べるのが一番おいしいと思う人もたくさんいるでしょう。

農薬が付着するのは、トマトの皮だけど。

農薬が散布されるのは、トマトの表面、つまりトマトの皮。でも、農薬は本当に表面だけに留まるのでしょうか。表皮からトマトの中身へと浸透することはあるのでしょうか。トマトのデータではありませんが、農薬工業会が引用しているデータに、「ばれいしょ」や「にんじん」について、「水洗い」「皮むき」、そして「揚げる」などの加熱処理による農薬残存率が記されています。

それによると、どの方法でも農薬残存率が低下していることがわかります。トマトと根菜は異なる野菜ですから、当然ながら、比較にならない場合も多々あると思います。例えば、使用する農薬の種類や農薬の残存場所も異なるでしょうし、それぞれの皮の構成成分も異なるでしょう。

このように両者を単純に比較することはできませんが、参考になる点もあります。それは、「水洗い」「皮むき」、加熱処理のいずれによっても残留農薬が減少する点です。

残留農薬を検査するポジティブリスト制度

農薬って、本当に大丈夫?

農薬は、野菜だけでなく、多くの果物にも使用されています。なぜなら農薬は、害虫や雑草から農作物を守り、収穫量や品質を維持し、農家の負担を軽減するために必要不可欠なものだからです。また、農薬を使用している国は日本だけではありません。

欧米やアジアの国々でも農薬は使用されています。先に挙げた農薬工業会によれば、農薬の使用量は、作物の種類、気候などによって異なるということです。しかし、食は、私たちが生きていくうえで欠かせないものです。そして、私たちの健康を維持するためにも、食の安全性を確保することは非常に重要なことです。

そうした安全性の点からも、日本をはじめとする世界中の国々が、様々な基準や検査、評価等を行い日夜奮闘しながら、私たちの食を守ってくれているのです。

残留農薬って何?

農作物に散布された農薬は化学物質を含む薬剤ですから、その薬剤としての作用を発揮したあと、それが農作物からすべて消えてなくなってしまうわけではありません。間接的、かつ直接的な形で、最終的に私たちの口に入ってくるわけです。

例えば、農薬が付着した作物が農作物に残り、それが家畜の飼料になって、やがて食肉や牛乳という形で私たちの口に入ることもあるでしょう。あるいは、野菜や果物のように、農薬が付着したものを私たちが直接口にすることもあるわけです。

このようにして、使用した農薬が農作物などに残ることを「残留農薬」と呼んでいます。

トマトの皮に、栄養はあるの?

真っ赤に熟れた、みずみずしい夏野菜、トマト。このトマトには、多くの栄養価が含まれてます。例えば、代表的なものでリコピン。さらにビタミンCやE、カリウム、β—カロテンなど。そのうえ、トマトはカロリー低めで、ビタミンを多く含むため、美肌や風邪予防、老化抑制にも効果的だと言われています。

また、トマトの赤はリコピンの赤。つまり、トマトの真っ赤な皮にも、豊富なリコピンと、さらにβ—カロテンを多く含むため、トマトを皮ごと食べると無駄なく、効率よく栄養素を摂取することができるというわけです。そして、リコピンやβ—カロテンの摂取による生活習慣病や動脈硬化予防、さらに脂質異常の改善への期待も高まっています。

残留農薬があっても、トマトは食べれるの?

農薬散布は、私たちに害を与えることを目的としたものではありません。

ですので、野菜や果物に残留農薬があったとしても、それは私たちの健康に害を及ぼすほどの量ではありません。

また、水洗い後に食しても問題はなく、さらに皮をむく、加熱することで、農薬残存率を低下させることができるわけですから、残留農薬があっても、食材をおいしく食すことができるわけです。

トマトの栄養素は、加熱しても維持できる?

加熱することで、野菜に含まれる多くのビタミンが失われると言われますが、トマトはちょっと違います。トマトに豊富に含まれるリコピンとβ—カロテンは「脂溶性」で、熱に強い性質があります。これらは、油と一緒に摂取すると吸収力が高まります。

また、トマトには、うまみ成分であるグルタミン酸が豊富に含まれているため、加熱調理でおいしさがさらに倍増します。そのまま食べても、加熱してもおいしいトマトは、料理しやすい食材と言えるでしょう。世界にトマトを使った料理がたくさんある理由を、ここにうかがい知ることができます。

それでも気になる残留農薬。

そうは言っても、農薬は化学物質を含む薬剤なので、たとえ微量であっても、気になるものはどうしても気になる。そんな人もきっといるに違いありません。根菜の例ですが「ばれいしょ」や「にんじん」は、「皮むき」等により農薬の残存率を低くすることができます。

こうした根菜と同じ結果がトマトにもでるかどうかわかりませんが、トマトも「皮むき」等によってある程度の農薬を落とす効果が期待できるでしょう。そうした場合、例えば、トマトの「皮むき」は比較的に簡単で、切り目を入れたトマトを500Wの電子レンジで数秒間チンし、切り目にそって皮をむけば出来上がりです。

こうすれば、残留農薬を気にすることなくおいしいトマトが食べれるし、熱に強いリコピンやβ—カロテンの摂取も可能になるわけです。

残留農薬があっても、トマトは、おいしくて、健康に良い食材

野菜や果物に欠かせない農薬ですが、食の安全を考えた上での農薬使用なので、健康に影響するほどの量ではありません。

したがって、たとえ農薬が残っていたとしても、洗ってそのまま食することも可能ですし、加熱調理等により農薬残存率が低下するので健康を損なうようなことはありません。

トマトは、そのままでも、加熱調理してもおいしい、しかも健康に良い優れた食材なのです。