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農作物の残留農薬、という言葉をよく耳にするようになりました。スーパーで買い物をする際、農薬のことを気にする読者もいるのではないでしょうか?海外産の農作物に残留する農薬の量は危険なのか、農薬に関する基礎知識の紹介とともに、実際の研究結果を基とした調査結果を紹介します。

一部、驚きの調査結果が出てきましたので、是非この記事を読んでほしいと思います。

残留農薬を検査するポジティブリスト制度

農薬とは

ご存じの方も多いかと思いますが、そもそも農薬とはなんなのか?についておさらいをしていきます。「農薬取締法」によると、農薬とは「農作物を害する動植物、ウイルスを防除する薬剤、または農作物の生理機能を増進したり、抑制したりする薬剤」となっています。

農作物を食い荒らす虫や、作物の成長を阻害する雑草を駆除する、というイメージは一般的かと思いますが、農作物の成長促進剤等も農薬のカテゴリに含まれるようです。農薬を使用しない場合、農作物が害虫などから被害を受ける可能性が高まるため、その収穫量も減少してしまう傾向にあります。

現代のように有効な農薬が存在しなかった時代には、江戸時代の享保年間に発生した稲害虫による飢饉や、1845年にアイルランドで発生したジャガイモ疫病菌による大飢饉など、多くの食糧危機が発生しました。社団法人日本植物防疫協会が発表した「農薬を使用しないで栽培した場合の病害虫等の被害に関する調査」によると、農薬を使用しなかった場合は平均して米は28%、小麦は36%、キャベツは63%その収穫量が減ってしまうとあります。

りんごやももに至っては、なんとそれぞれ97%、100%となっています。

農薬の安全性はどのように確保しているの?

害虫や小動物を駆除する、という性質上、農薬を使用した作物は食べても大丈夫なのか?と不安に思う消費者は多いと思います。食の安全性を度外視した農薬のもと育った作物を食べるのは、流石に躊躇しますよね。そのため、日本は、農薬取締法に基づく農薬の登録制度によって、農林水産省から認可・登録された農薬のみ製造・輸入・販売していいよ、というルールになっています。

作物への害や人体に対する毒性、作物への残留性などの試験結果を提出し、基準を満たしていれば合格という流れになります。新規に開発したひとつの農薬を試験するのに約10年程度の期間を要するため、かなり念入りに試験をしている、といえます。

環境保護の観点から、コイなどの水生動物や、ミツバチなどの有用昆虫に対して強い毒性はないかを調べる検査も行っています。

残留農薬と残留基準について

作物に付着し残ってしまった農薬を、残留農薬と呼びます。農薬が付着したエサを食べた牛から生産した牛乳に、農薬が残っていた場合も同様です。登録制度によって国から認可を受けてはいるものの、農薬が毒性を有することに変わりはありません。

そのため国は、ここまでの量であれば人体に影響がない、と考えられる残留基準を農薬ごとに「ADI」という数値で表しています。ADIは生涯にわたって健康被害が発生しないという観点で、一日あたり体重1Kgあたりに摂取可能な残留農薬の量で表されます。

例えば「A」という農薬のADIが0.1mgであれば、体重が50Kgの人は1日に5mgまで、残留した「A」を摂取しても問題ないということです。

一定の使用方法や用量のもと特定の農薬を使用した場合、収穫後の農作物にどの程度の残留農薬が発生するかを調べる試験を「作物残留試験」と呼びます。国や生産者は作物残留試験等をとおして、消費者が口にする残留農薬の量がADIの約8割を超えないよう日々努めています。

海外の農産物は危険?各国の残留農薬量

日本の食糧自給率は約40%。口にする食べ物の半分以上は海外で生産されている、という計算になります。自身や家族の健康を考えるのであれば、海外で生産された作物に付着した残留農薬についても知っておく必要があります。

公の研究機関である、「東京都健康安全研究センター」が公表する「令和元年度輸入農産物等の残留農薬検査結果」をもとに、国ごとの農作物の残留農薬量を調べ、その危険性を明らかにしてゆきます(ADIの正しい単位表記はmg/Kg/dayですが、説明の簡便化のため以降はmgで表記します)。

アメリカ

まずはイチゴです。アメリカから輸入される農作物の中でも、イチゴは残留農薬量が多いと言われています。アメリカ産のイチゴの検査結果を確認したところ、プロピコナゾールという農薬が比較的多く残留していることがわかりました。

イチゴのADIは0.018mgのため、体重50Kgの人は1日0.9mgが摂取量の限界となります。

検査結果はイチゴ1Kgあたり0.04mgでした。

イチゴ1Kgは約80個程度であるため、1日の限界摂取量を超えることはまずないと思いますが、ドライ加工されたイチゴであれば、それなりの量を食べることが可能であるため、少し気になる調査結果となりました。次にオレンジです。

イマザリルという農薬が多く残留しています。オレンジ1Kgあたり、1.6mgになります。一方のADIは0.025mgであるため、体重50Kgの人の1日あたりの限界摂取量は、1.25mgです。

これには筆者も驚かされました。オレンジは一つあたり約200gなので、4つ食べると限界摂取量を超えてしまうのです。ただ、残留農薬のほとんどは、オレンジの皮部分に付着していると考えられるため、皮ごと食べなければ問題ないという考え方もあります。

皮つきのドライオレンジ等を食べる場合は注意が必要かもしれませんね。

オーストラリア

オーストラリア産のオレンジには先ほど紹介したイマザリルが、1Kgあたり3.2mg残留しています。アメリカ産の倍ですね。体重が50Kgの人が1日におおよそ2つ食べると、限界摂取量を超えてしまう計算になります。

皮はしっかり洗う、皮は食べない、スライスした皮を調理に利用しない、など仮にオーストラリア産のオレンジを購入したのであれば、相応の対策をとることをおススメします。また、ブドウにはクロルピリホスという農薬が、1Kgあたり0.95mg残留しています。

ADIは0.01mg、すなわち体重50Kgの人は1日0.5mgまでしか摂取できないため、1日に500gを食べるとアウトです。

生食であれば、皮をしっかり洗うことでいくらかの対策は可能です。ドライフルーツの場合は注意が必要ですね。

中国

ホウレンソウには、イミダクロプリドという農薬が比較的多く残留しています。50Kgの人の限界摂取量が2.85mgであるのに対し、ホウレンソウ1Kgあたりの残留量は0.09mgでした。スナップエンドウには、ジフェノコナゾールが1Kgあたり0.05mg残留しています。

50Kgの人の限界摂取量は0.48mgです。1日で限界摂取量を超えることはないと思いますが、サラダで食する機会の多い野菜であるため注意が必要です。

海外の農作物の残留農薬についてまとめ

海外の農作物に付着した残留農薬の危険性を、農薬の基本、残留農薬の意味またその指標とともに紹介しました。「農薬とは」で紹介したとおり、果物は農薬を使用しないとほとんど収穫できなくなってしまうという特徴からか、多くの農薬が残留していることがわかりました。

読者の皆さんもぜひ、残留農薬に関する正しい知識のもと、健康な食生活を送ってください。